空いっぱいに蝉時雨 あとがき
 最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
なんとなく竜頭蛇尾で(竜頭だったかな)気が抜けて終わってしまったかな。 まあ、素人のお話ですから。
 ところで、この話の中では、光の速さでは時が止まることが前提でしたが、 私はそんなことは信じてないんです。なぜって、光はいくらでも作り出せる し、いずれ光の速さで移動する物体を人は作り出すだろうけど、時だけは つくれないでしょうからね。
 時は物理現象ではないんですから。

 まず音を考えてみましょう。遠くで音を出す。たとえば雷。数秒後に音が 聞こえてくる。その音は何秒か過去の音です。音の上では時が止まってい るのです。数秒といえど、それは過去の音が聞こえてるんですから。
 遠くで、ものすごく大きな声でしゃべれば、ニ時間だって三時間だって昔の声が聞 こえるはずです。
 光もそれと同じで、一時間前に出た光が今見えるのは、単にやっと到達し ただけに過ぎないので、何も時間が止まっていたせいではないのではないで しょうか。
 音より速い飛行機で、自分の声を追いかけていけば、一時間前の自分の声 に追いついてそれを聞けるように、光より速い乗り物で光を追いかけていけ ば、一時間前の自分の姿に追いついて自分を見ることができるでしょう。し かし、それは単に光の作った映像であって実態ではないのです。触ることも 話すこともできない、たんに光にすぎないものです。それは幻灯機の映像の 中に手を差し伸べるのと変わりがないんです。
 では、光の速さで自分が飛んだらどうでしょう。やはり、時間は同じに過 ぎていくでしょう。
140億光年先の銀河が見えたといいます。140億年昔の光だといいます。 そうなんです、140億年という時が流れなければその光は地球に届かなか ったんです。もし、140億年という時間が流れずに止まっていたら、光は 1歩も地球に近づけなかったでしょう。
 いや、光の外部で時間が動いても光そのものの中では時間は止まっている というなら、波のようだとか、粒子のようだとかいう光の振る舞いも、凍り ついているでしょう。ようするに、光は,とても速い物にしか過ぎないもので、それ以上でもそれ以下でもないものでしょう。
 だから、光の速さの乗り物に乗っても、一秒は一秒にしか過ぎないでしょ う。ただその間に、地球7回半回っているだけで、瞬きしてる間に、地球5 周も回ったぞ、てだけで、時間なんか一瞬も止まってたわけじゃないと思い ませんか。
 もう一度先ほどの、140億光年先の銀河が発見されたという話に戻ります。 その光は宇宙ができて、10億年経った時の光らしいです。
 少し算数で計算してみます。数学となると苦手なもので。
140億年前、地球は(もちろん、今の地球とは違って、バラバラで、ガスやら ちりやらほかの星の一部やらになってたかもしれないけれど、いずれ地球に なることは確かな物質。)その銀河から、最大で20億光年以内の位置にあっ たことでしょう。(ビッグバンでお互いが反対方向に光の速さでとびだした として。)
 その時、その銀河から出た光が140億光年後に地球に追いつくという計算 をすると、(昔、小学校で悩まされませんでしたか。A地点とB地点から同 時に出発しました。A君がB君に追いつくのは、って問題。)地球の平均スピ ードは光速の約0.878倍になるわけです。もちろん算数の計算だから、現在 の地球のスピードがどれくらい落ちているのか私には計算できないけれど。
ところで、こんなスピードで地球が飛んでたら、地球上の光という光は、ド プラー効果で、みんなへんちくりんになってしまうのじゃないのかな。
 では、なぜ遠くの星の光はみんな赤方偏移するのでしょう。そんなの、何 億年も何十億年も飛び続けたら光だって古びてセピア調になるに決まってる でしょう。というのは素人の考えと思っていたら、やはり同じ考えをした人 がいたみたいですね。で、そんなことはないと証明されたとか。でも、そう 書いてある本を読んでいると、はじめのほうには、星が高速で後退している から赤方偏移が起こると書いてあって、後のほうでは、宇宙が膨張している から赤方偏移が起こると書いてあって、なんだか、説明したいものにあわせ て、適当に理由付けしているようにおもえたんだけどどうなんだろう。
 その人の言うには、宇宙が膨張するというのは、空気が膨張するというこ ととはまるで違うことらしくて、空間そのものが膨張するんだとか。だから、 光も時間の経過とともに、波長が広がるのだとか。こうなると算数の頭では とても想像さえできないところですね。でも、おかしいなと思うのは、14 0億年前の星たちは、すごく小さくなってしまうんじゃないのかなと思える ことなんです。空間が膨張すると光も膨張する、ということは、物質ももち ろん膨張するということです。とすると、反対にたどると,星は収縮するということです。すると、140億年前の星は、まめつぶく らいだったのかな。多分、今見える宇宙が、そっくり縮まって、小さな空間 に収まっていることになるんでしょうね。もし地球があって、その上に人が いたら、今の人に比べれば、ウイルスよりはるかに小さいだろうけど、見え る宇宙はここと同じで、相対的な比率は同じなのだから、自分が小さいのも 気づかないんだろうね。
 よく,この宇宙の空間の膨張に,風船が使われます。風船は,中に空気入れで空気を入れれば膨らむけれど,この三次元の宇宙の空間を膨らませるには,どこに、誰が、何を、どんな方法で吹き込んでるんでしょうね。(疑問のひとつ。風船上の黒い点を星に見立てて遠い星ほど速く遠ざかるというのだけど、黒い点はいつまでも黒い点のままなんですよね。本当の風船上では,黒い点もどんどん大きく広がっていくんですよね。宇宙が同じ原理で膨張するなら,星も同じ比率で膨張するはずですよね。だから,45億年前に,太陽系ができたときの,太陽や,地球は今よりずっと小さかったんでしょうね,もちろん太陽系も。)

 本当は、ええ、ビッグバンはなかったんです。私はそう思います。
 でも、すごい物理学者たちがあるといってるんだからあるんでしょう。  あったとしたら、全宇宙の爆発だから、それはそれはすごい光でしょう。 だから、150億光年先の宇宙が見えたら、それは150億年前の宇宙だから、そ こで起こっていたはずの、ビッグバンが見えそうな気もするんですよね。 140億年前の銀河が見えるのだから、その無限大倍の爆発が、それよりたっ た、10億光年先にあるのだから、光の量としては見えて当然なはずなんです よね。
 でもこれは残念ながら見えないんですよね。なぜなら、ビッグバンのとき、 地球はそのまっただ中にあったんですから。おそらく。
 最初は、地球もがんばって、光と同じスピードで飛んでいたことでしょう。 でもすぐ息切れしてスピードが落ちて、ビッグバンの光は、さっさと地球を 置いて先へ行ってしまって闇の向こうってわけ。自転車と自動車が追いかけっこをしているようなもので、あっさり自動車はいなくなってしまう。自動車が、 Uターンしてこない限り二度と遭うことはない。それと同じで、一度通りす ぎた光は何かで跳ね返ってこない限り二度と見ることはできないのですから、 いくらがんばっても、地球を通り過ぎてしまったビッグバンの光がいくら強 くてももう見ることができないのです。でも、本当は見えるらしいんですよ ね。背景放射とか何とかいうらしいんですけど。何かにぶつかって跳ね返っ てくるんですかね。光が先頭なんだからぶつかる相手なんか無いはずなんで すが。
[曲がった空間について」思うこと。
 アインシュタインが,昔,重力によって空間が曲がるということを理論で説明したと聞きます。その理論は難しすぎて(絵やなんかで説明されてるのを読んだんだけどちんぷんかんぷん)私なんかにはとても理解できませんでした。で,1919年イギリスの観測隊が日食のときに太陽のそばで光が曲がるのを観測したのが,この理論の具体的な観測例の始めだとか本に載ってました。やはり,昔,出所は忘れたのですが,(多分新聞だったように思うのですが。)本当は沈んでいるはずの太陽が,水平線上に残っている,という話を読んだことがあります。光が曲がったために,水平線に隠れているはずの太陽が,蜃気楼のように浮かんで見えるという説明でした。もちろん,地球の重力で光が曲がったんじゃなくて,大気による屈折現象と説明されてました。
どちらが正しいんでしょう。もちろん,どちらも正しいんでしょう。でも,素人には同じ現象に思えることが,まるで違うことにされているのは,考えてしまいます。アインシュタインは,とても頭のいい人だったから,間違いはないとしても,太陽の大気で星の光が屈折しても少しもおかしくないと思うのです。いかがでしょうか。その分は差し引いてももっと曲がっているんでしょうね。多分。

 ブラックホールというのがあるといいます。どんなものでも吸い込むとい う恐ろし気な星らしいです。そんな星が実は宇宙には、五万とあるという話 です。ところで、そんなブラックホールやほかの星やら、宇宙のみんなの星 を一点から撒き散らすためには、どんな爆発があれば良いのだろう。光さえ 吸い込む星が、無数に集まってるのだから、光の無限大倍の速さで飛び出す 爆発でなくちゃだめなんでしょうね。算数で考えると、そんなことはありえ ないんですよね。数学や、物理学や、色々な妖しい力学で考えるとありえる というけれど、私はどうも信じられないんですよね。
 どうも、事実の宇宙ではなく、こうあってほしいという宇宙(まず光あれ と言った神の創造した宇宙。)を証明するために、果てしなく計算している ような気がするんです。昔、といってもほんのついこの前なんですけどね、 私の、曾おじいさんのころ、いや、あと一代前かな、地球の周りを太陽に回 らせるために、とてもすばらしい計算式が編み出されたのと同じように。

   宇宙の始まりは?じゃ、その始まりの前はどうなってたの?宇宙の果ては? じゃ、宇宙の果てのその向こうはどうなってるの?そんなことを考えて、頭 の中がシンとなってしまった子供のころを思い出しながらこの話を作りまし た。
 今はもう、そんな恐いことは考えずにのんびりとナイターなんかを見なが ら、夜をすごしてます。
 子供って、まだ、産まれる前の世界を引きずっているから、そんなこと考 えるんですよね。
 というわけで、世界中の不眠症の子供だった人たちにこのお話を送ります。

 これで、全部終わりです。

   1999年8月 妹空並刻記
   2000年12月18日あとがき改定

(あとがき終わり)


semi13-1 エピローグへ

アンケート アンケート

go to home
蝉時雨目次へ




(C) 1996-1997
written by
『妹空並刻』